感覚統合と情報能動性
脳は外界から膨大な感覚情報を常に受け取っている.しかし,脳には,この膨大な情報をすべて処理するだけの情報処理能力はないものと考えられる.
脳が情報の海の中で自律的に機能していくためには,受け取った情報の中から有用な情報を選択して(あるいは,不要な情報を無視して)いかなくてはならない.
このように,個体が自ら能動的に情報処理の内容を選択する機能を情報能動性と呼ぶ.
能動性という言葉はしばしば主体が他のものに働きかけて相互作用することを意味する場合が多いが,
ここでは,個体が自ら情報処理の内容を定めることを明確にするために,特に,情報能動性という言葉を使っている.
もちろん,注意は情報能動性の一つの形態である.
さて,情報の有用性は個体がそれぞれ決めるものである.
すなわち,人それぞれがもつ希望や欲求,またその人がおかれた文脈によって情報の価値は異なる.
そのため,情報の選択基準に個体の主観性が関わることは必然的である.
下にあげた信頼度に関わる一連の研究はこの主観性を扱ったものである.
個体の主観性を科学や工学の対象として扱うことは難しいが,
本研究室では,このような主観的情報処理が脳情報処理の原理の一つであると考えて研究を行なっている.
人間が行動を決める問題は巨大な探索空間において解を求める問題と見なせるが,
最適解を求めることが現実的に不可能な巨大な探索空間の中でそこそこ良い解を限られた時間内に得ることが脳情報処理の一つの特徴であると考えている.
脳がもつこのような機能を工学的視点から捉えた研究がセンサフュージョンである.
センサフュージョンとは,多数のセンサ情報を統合して新しい機能を実現するための方法論であるが,
ここでも上に述べたものと同じ問題が生じる.
研究内容と成果
能動的知覚の数理モデル
- 逐次実験計画としての能動的認識モデル
- 能動的認識機能の自己獲得モデル
センサフュージョン
信頼度
触知覚システム
- 能動的な触知覚認識システム
- 触感識別システム
運動制御における情報能動性
- 複雑な運動タスク(お手玉)における視線の動き
- 環境適応における視線の動き