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#norelated

*出張先に楽器をもっていく
*音を一様に鳴らす

歳をとってから楽器を始めれば当然身体の動きは鈍いので,ある程度上達するには日々練習を積み重ねるしかない.それで,毎日少なくとも20分は必ず楽器に触れるようにしている.
右手,左手ともに少しずつ慣れてくると,これまであまり気にしていなかった(気にしていなかったわけではないが,直す優先順位が低かった)音色がいろいろと気になってくる.

ところが,研究者をしていれば,当然,学会,研究会,打ち合わせ等で出張に出なければならない.1泊だけであれば,出発する日の朝に練習し,帰ってきた日の夜に練習すれば,一応毎日楽器に触れていることができる.しかし,2泊以上になるとそうもできない.今年の6月はたまたま5泊の宿泊が必要な出張と2泊の宿泊が必要な出張がほぼ引き続いてあった.5日間も楽器に触れないでいるとまずいと思って,5泊の方は楽器を持参して出張に行き,2泊の方は楽器をもたずに行くことに決めた.
**''弓を大きく動かす''
レッスンでは,「いまの段階ではまずは弓を大きく動かしなさい」ということをよく言われる.これはおそらく,動きをこじんまりさせずに腕全体を使うように,という意味と,楽器をよく鳴らすように,という意味が込められているのではないかと思う.

**''楽器を持って飛行機に乗る''
個人的な印象では,弓を大きく動かすことにはやりやすい点とやりにくい点がある.やりやすい点は,弓を大きく動かした方が右腕の局所的な部分に余計な力が入りにくく,腕全体を滑らかに使うことができる点である.やりにくい点は,弓のコントロールが効かなくなることである.つまり,弓の動きの安定性が落ちて,音のばらつきが大きくなることである.ただ,だからこそ弓を大きく使えという話になるのだろう.つまり,初心者の段階で(まともに音をコントロールできない段階で),こじんまりと音を作ることに注意を向けてしまうのではなく,多少不安定でも弓を大きく使う練習をしてその中で適切な動きを学んでいくべきということなのではないかと思う.

5泊の方は,北海道のニセコで開催されたICCN2011 (international conference on cognitive neurodynamics)である.この学会は実行委員会の一員を務めていたので,会の最初から最後まで参加することになっていた.北海道で開催するということは楽器を持って飛行機に乗ることを意味する.さて,楽器をもって飛行機に乗るにはどうするか,ということで航空会社のHPを見ると,例えば,日本航空の場合には[[このページ>http://www.jal.co.jp/dom/service/instrument/]]の説明がある.これによれば,荷物室に預けるためのケースを貸してくれるということなので,これを利用することを当初は考えた.もちろん,プロの演奏家であれば高価な楽器のために座席を1席確保するのであろうが,素人なのでそこまでする必要もない.
**''弓が振動する''
弓の使い方でいま問題なのは,ダウンボーの際に弓が振動する現象である.この現象はアップポーでは生じず,ダウンボーのそれも先弓1/2から1/3程度の場所でのみ起きるのである.もちろん,問題は右腕,右手,あるいは姿勢のバランスあたりにあるのだと思うが,いろいろと試行錯誤してもどうも原因がよくわからない.あまり考えると,また右腕に余計な力が入ってしまうことになるので,念頭におくだけにしておこう.

とはいえ,一応先生に相談してみたところ,「荷物室に楽器を預けると楽器に支障が生じるという話をよく聞くので,楽器は客室に持ち込んだ方がよい.客室持ち込み用のケースを貸してくれるからそれを使ってはどうか」という返事が返ってきた.ご自身で演奏活動をされている先生に習っていると,こういう情報をいろいろと教えてもらえるのでありがたい.さきほどの,日本航空のページにも確かにそのようなサービスがあることが書いてある.ケースの予約は事前にできないと書いてあるが,羽田と千歳で借りられないことはないだろうと思って,あまり心配せずに当日を迎えた.
**''右手の動き:速さと圧''
その後いろいろと練習しているうちに,音が均一にならない場合には同じ状況に陥っていることに気づくようになった.それは,音程が正確にとれないなど気になる部分に差し掛かると,その影響が無意識のうちに右手の動きに及んで弓の動きが悪くなる(弓が動く量が少なくなる)ことである.つまり,いつも右手は弓が一定のスピードで動くように''勢いを感じている''ことが重要であるということである.

当日は,自宅から自分のケースに楽器を入れて空港に向かい,荷物のチェックインカウンタで「バイオリンを機内に持ち込みたい」といったら,すぐに奥から小ぶりのケースを持ってきた.そこで,カウンタの脇で,自分のケースから楽器を取り出し,このケースに入れ替えて,持ってきた自分のケースはcheck-in baggageとして預けた.このケース,グラスファイバー製で非常に軽く,持ちやすい.ただ,白地のケースにJALとはっきり書いてあって目立つのがいま一つである.
もう一つ,弦に対して十分に圧をかけることも必要である.ダウンボーで圧が不足すると弦が跳ねやすくなるようで,人差し指の感覚に耳をすまして圧を十分にかけることも重要である.

小さいとはいえ長さがあるので,機内にoverhead-binの中にうまく入るかと少々心配だったが,いざとなればcabin attendantにお願いすればよいだろうと思って,機内に乗り込んだ.幸い,行きも帰りも時間帯がそれほど遅くなかったのでoverhead-binには余裕があってゆうゆうと楽器を納めることができた.蛇足ながら,日本航空では,私が楽器をもって機内に乗り込んでいることをきちんとトラックしているようで,座席についたあとで,attendantがやってきて「楽器は問題なく収納できましたか」と尋ねてきた.こういうところの安心感は,経営不振とはいえやはりJALは最近のLCCとは一味違う感じがする.話が脇道にそれました.
上に書いたように,右手の動きは心理的要因の影響を大きく受けるようで,同じ音型でも「苦手意識がある個所」では明らかに動きが鈍る.余計なことを心配しないで,右手の勢いと圧が一定になるように注意を払うことが重要なようである.

あとは特別なことはない.baggage claim で預けた自分のケースを取り出し,借りたケースから自分のケースに楽器を移して借りたケースを地上係員に渡す.これですべて終わりである.何の問題もなく楽器を持ち運ぶことができた.

**''ホテルの部屋で楽器を弾く''
さて,楽器を持っていくのはこれでうまくいった.次は,楽器をホテルの部屋で弾いて問題がないか,ということである.バイオリンを弾く同業の研究者からはミュートをつければ音は相当小さくなるので問題なしと聴いていたが,先生にも相談してみたところ,「バイオリンの音は耳慣れた曲でなければ日常的な雑音の中に埋もれやすいので,あまり気にしなくてよい.きちんとしたホテルであれば,ミュートをつけて弾けばまず問題にはならない.ただし,ビジネスホテルは遮音がだめで,下手をすると怒鳴り込まれることもあるらしいので,要注意.」とのことだった.幸い,ICCN2011の会場はHilton(もともとはプリンスホテルの建物?)なので,まず問題ないだろうと思った.実際に,部屋に入ってみると,隣室や廊下の音はほとんど聞こえてこない.部屋のまどからは緑の景色がよく見えて(羊蹄山もアンヌプリもよく見えないという意味ではずれの部屋だったが,十分快適な部屋だった),景色を見ながら楽器を弾けるという意味では申し分のない環境だった.

学会中は,朝,昼,夜のいずれかの時間帯にちょっとした時間を見つけて,慣らし程度に弾いてみた.ミュートを付けているとはいえ音がすることに変わりはないので,本気で弾くことはできなかったし,ミュートを付けると音色が変わってしまうので,その点でもあまり本気で弾くことはできなかった.とはいえ,やはり毎日楽器に触れていることができたのはよかった.

**''楽器にふれない日が1日あると感覚を忘れる?''
ニセコから帰ってきたその週の後半は,岡崎でモーターコントロール研究会に参加した.こちらは2泊であったが,岡崎にはきちんとしたホテルがあまりない(あるにはあるけれども会場から少し離れている)ので,楽器を持っていくことはあきらめて,出発日の朝に少し弾いて,帰ってきた日の夜に少し弾くことにした.

帰ってきて楽器に触ってみて感じたことは,思っていた以上に左手の感覚が鈍くなっていることであった.つまり,指のポジションが不正確になって,音程がいつもと同じようにはとれないようになっていた.もちろん,少し弾けばもとにもどったのだが,私のような初心者でも(初心者だから?)少し楽器から離れると感覚が鈍ってしまうのかもしれない.