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#norelated

(現在執筆中)
[[バイオリンのはなし>jViolin]]

*弓の持ち方
*出張先に楽器をもっていく

やはり弓の持ち方は難しく,習い始めて50日たってもいまだにしっくりこない.[[前回のメモ>jViolin/Q003]]のその後の記録を残しておきたい.
歳をとってから楽器を始めれば当然身体の動きは鈍いので,ある程度上達するには日々練習を積み重ねるしかない.それで,毎日少なくとも20分は必ず楽器に触れるようにしている.

**''弓を持つ''
「楽器を支える」で書いたことと同じことなのだが,弓の場合も,やはり最初のうちは持つものを「力」で支えようとして余計な力が入ってしまう.あらゆる楽器演奏(おそらくスポーツも同様なのだろうが)で「脱力する」が最も重要だといわれるが,重要なことがあたりまえにできるのであればわざわざそれが重要だとはいわないはずだから,やはり脱力することは難しいことなのだろう.
ところが,研究者をしていれば,当然,学会,研究会,打ち合わせ等で出張に出なければならない.1泊だけであれば,出発する日の朝に練習し,帰ってきた日の夜に練習すれば,一応毎日楽器に触れていることができる.しかし,2泊以上になるとそうもできない.今年の6月はたまたま5泊の宿泊が必要な出張と2泊の宿泊が必要な出張がほぼ引き続いてあった.5日間も楽器に触れないでいるとまずいと思って,5泊の方は楽器を持参して出張に行き,2泊の方は楽器をもたずに行くことに決めた.

そもそも,私はバイオリンの勉強を始めるまでは弓は右手で「持っている」ものだと思い込んでいた.しかし,それは大間違いで,弓は弦の上に置く(つまり,弓の重さの一部は弦に預ける)のだということを知った.考えてみれば単純な物理の話であるが,弓の先端が弦の上に載っているときは,弓の重さは弦と右手でほぼ当分されるので弦に重さがかかりにくく,逆に弓の根本が弦にのっているときは弓の重さがほとんど弦にかかるようになる.このような重さの変化を右手でコントロールすることで一様な音が鳴るようにするということである.
**''楽器を持って飛行機に乗る''

こういった理屈は頭に入ったとしても,それを自分が身体感覚としてどのように理解するかというのは別問題である.実際,始めてしばらくのあいだ私は間違った持ち方をしていた.弓は通常「親指をくの字に曲げて下からスティックを支え,人差し指から薬指まではスティックの上に軽く載せ,小指を柔らかく曲げてその先端をスティックの上に置く」というように持つ.最初のころは,「人差し指から薬指の重さを弓に載せる」ということがよくわからず(これはいまだによくわからないが),さらに親指と中指で挟みこむようにして弓を持っていた.たぶんこのことは,下の項目に書く「手首に力が入っている」原因の一つになっていたのだろう.誤解をおそれずに印象をかけば「親指は下からスティックを支えほかの指が上から重さをかけることで弓を保持する」のが望ましい姿だとすると,私は親指と中指をスティックの側面からはさみこむようにして弓を支えていたのであった.この間違いに気づくことで,指から余計な力が抜けてだいぶん楽になった.
5泊の方は,北海道のニセコで開催されたICCN2011 (international conference on cognitive neurodynamics)である.この学会は実行委員会の一員を務めていたので,会の最初から最後まで参加することになっていた.北海道で開催するということは楽器を持って飛行機に乗ることを意味する.さて,楽器をもって飛行機に乗るにはどうするか,ということで航空会社のHPを見ると,例えば,日本航空の場合には[[このページ>http://www.jal.co.jp/dom/service/instrument/]]の説明がある.これによれば,荷物室に預けるためのケースを貸してくれるということなので,これを利用することを当初は考えた.もちろん,プロの演奏家であれば高価な楽器のために座席を1席確保するのであろうが,素人なのでそこまでする必要もない.

**''弓をまっすぐに動かす''
弓は通常,駒と指板の中央あたりで弦と接して,弦に垂直な方向にまっすぐに動かす.しかし,この弦に「垂直に弓をあてる」ことが難しい.これは楽器をもってみて初めてわかったことであるが,目から弓が弦にあたる部分までの距離が短いために,目で弓を見ても弦と弓が垂直になっているかどうかがよくわからない(つまり,距離が近すぎて直角のものが直角には見えない)のである.自分では垂直になっていると思って弾いていたのだが,家族から「弓が斜めになっている」と指摘されてようやくそのことに気が付いた.
とはいえ,一応先生に相談してみたところ,「荷物室に楽器を預けると楽器に支障が生じるという話をよく聞くので,楽器は客室に持ち込んだ方がよい.客室持ち込み用のケースを貸してくれるからそれを使ってはどうか」という返事が返ってきた.ご自身で演奏活動をされている先生に習っていると,こういう情報をいろいろと教えてもらえるのでありがたい.さきほどの,日本航空のページにも確かにそのようなサービスがあることが書いてある.ケースの予約は事前にできないと書いてあるが,羽田と千歳で借りられないことはないだろうと思って,あまり心配せずに当日を迎えた.

ではどうするかということで,一つの目安を発見した.それは指板の輪郭の線と弓の方向が平行に見えるようにするということである.これでだいぶんよくなったが,それでもE線ではあまり自信がもてず,鏡の前でチェックするとやはりがたがたしている.ただ,いずれにしても弓の動きを視覚に頼って判断することはよくない感じがする.できるだけ早く身体感覚で弓の動きがわかるようになりたいものである.
(追記:JNNS2011で沖縄に行く時も楽器をもっていったのだが,この時は行きと帰りで同じケースを渡された.沖縄まで楽器を持っていく人は少ないということだろう.)

**''手首に力が入る''
さて,楽器を借りて自宅で1週間練習してレッスンを受けにいったときにまず先生に指摘されたことが「手首」「甲」に力が入っているということであった.具体的には,右手の手首が先行して右手が動いていて,あわせて肘が低く手首が高くなっているということである.こうなると,右腕の動きが制約されて右腕の重さを弓にうまく載せることができないということだった.「手首から力を抜いて肘の屈曲,伸展を使って弓を動かしてください」(先生がこのような言葉を使ったわけではなく私の理解ではということである)」
というなので,その次の週はこのことに注意して練習することにした.このときのレッスンで,「弓の根本まで使うのは難しいので,まずは弓の先端半分だけでよいです」と先生がおっしゃっていたのだが,その理由はそのときはよくわからなかった.
当日は,自宅から自分のケースに楽器を入れて空港に向かい,荷物のチェックインカウンタで「バイオリンを機内に持ち込みたい」といったら,すぐに奥から小ぶりのケースを持ってきた.そこで,カウンタの脇で,自分のケースから楽器を取り出し,このケースに入れ替えて,持ってきた自分のケースはcheck-in baggageとして預けた.このケース,グラスファイバー製で非常に軽く,持ちやすい.ただ,白地のケースにJALとはっきり書いてあって目立つのがいま一つである.

「手首に力が入らないようにするにはどうすればよいか」「肘の動きを主導するにはどうすればよいか」を考えていて思いついたことは,前腕の動きは小指側(尺骨側)が軸になるのではないかということである.ピアノを弾くときの注意事項として,腕のローリングの中心は小指側であるということがある.ピアノを弾くときは,ドレミの音は通常親指から弾くために,多くの初心者は親指側を軸として捉えてしまうのだが,骨格系の構造を考えると小指側を中心に考えるのが合理的である.このことから想像をたくましくして,バイオリンでも右手の動きは小指側が軸になって動くのではないかという予想をたてた.このイメージをもつことで,手首から少し力を抜くことができたと同時に,前項で書いた持ち方の誤りにも気づくことができた.
小さいとはいえ長さがあるので,機内にoverhead-binの中にうまく入るかと少々心配だったが,いざとなればcabin attendantにお願いすればよいだろうと思って,機内に乗り込んだ.幸い,行きも帰りも時間帯がそれほど遅くなかったのでoverhead-binには余裕があってゆうゆうと楽器を納めることができた.蛇足ながら,日本航空では,私が楽器をもって機内に乗り込んでいることをきちんとトラックしているようで,座席についたあとで,attendantがやってきて「楽器は問題なく収納できましたか」と尋ねてきた.こういうところの安心感は,経営不振とはいえやはりJALは最近のLCCとは一味違う感じがする.話が脇道にそれました.

**''肘の動き''
その次のレッスンに行って教えてもらったことは「肘の動き」である.肘関節の屈曲,伸展を使って弓を動かすことはだいたい感覚的に理解できるようになっていたのだが,肘関節の動きだけで弓の動き全体を実行することはできない.弓の先の半分くらいが弦の上にあるときは肘関節の動きだけでおおよそ弓を動かせるが,弓の根元に近づくと肩の回転(つまり,肘の動き)が重要になってくる.私は肘の回転ばかりに意識が向いていたために,弓の根元の部分の動きに無理が生じていたのである.逆にいえば,弓の根元に近づくにつれて肘を上げて前腕を水平に保つようにしないといけない.
あとは特別なことはない.baggage claim で預けた自分のケースを取り出し,借りたケースから自分のケースに楽器を移して借りたケースを地上係員に渡す.これですべて終わりである.何の問題もなく楽器を持ち運ぶことができた.

レッスンで右腕の動きを何度も教えてもらって,翌日から家で練習したがこれがとても難しい.この段階で,先生がその前のレッスンで,「弓の根本まで使うことは難しい」とおっしゃっていたことを実感することになった.
**''ホテルの部屋で楽器を弾く''
さて,楽器を持っていくのはこれでうまくいった.次は,楽器をホテルの部屋で弾いて問題がないか,ということである.バイオリンを弾く同業の研究者からはミュートをつければ音は相当小さくなるので問題なしと聴いていたが,先生にも相談してみたところ,「バイオリンの音は耳慣れた曲でなければ日常的な雑音の中に埋もれやすいので,あまり気にしなくてよい.きちんとしたホテルであれば,ミュートをつけて弾けばまず問題にはならない.ただし,ビジネスホテルは遮音がだめで,下手をすると怒鳴り込まれることもあるらしいので,要注意.」とのことだった.幸い,ICCN2011の会場はHilton(もともとはプリンスホテルの建物?)なので,まず問題ないだろうと思った.実際に,部屋に入ってみると,隣室や廊下の音はほとんど聞こえてこない.部屋のまどからは緑の景色がよく見えて(羊蹄山もアンヌプリもよく見えないという意味ではずれの部屋だったが,十分快適な部屋だった),景色を見ながら楽器を弾けるという意味では申し分のない環境だった.

この文章を書いている時点では,いまだに右腕の動きや弓の持ち方を習得していないので,この項目についてはここまでとするが,試行錯誤の過程で気付いたことを一つだけメモに残しておきたい.それは,姿勢を正しく保つと右手の動きが楽になるということである.
学会中は,朝,昼,夜のいずれかの時間帯にちょっとした時間を見つけて,慣らし程度に弾いてみた.ミュートを付けているとはいえ音がすることに変わりはないので,本気で弾くことはできなかったし,ミュートを付けると音色が変わってしまうので,その点でもあまり本気で弾くことはできなかった.とはいえ,やはり毎日楽器に触れていることができたのはよかった.

ピアノにせよバイオリンにせよ,身体の作り出す力を利用して音を出すので,腕だけでなく身体全体の姿勢や動きが重要である.私は普段から猫背で姿勢がよくないので,それが原因で身体がうまく使えていないことがよくある.バイオリンでの右手の動きについては,姿勢を正しく保ったときに上腕の動きが楽になることに気付いてあらためて姿勢の大事さに気付いた.
**''楽器にふれない日が1日あると感覚を忘れる?''
ニセコから帰ってきたその週の後半は,岡崎でモーターコントロール研究会に参加した.こちらは2泊であったが,岡崎にはきちんとしたホテルがあまりない(あるにはあるけれども会場から少し離れている)ので,楽器を持っていくことはあきらめて,出発日の朝に少し弾いて,帰ってきた日の夜に少し弾くことにした.

帰ってきて楽器に触ってみて感じたことは,思っていた以上に左手の感覚が鈍くなっていることであった.つまり,指のポジションが不正確になって,音程がいつもと同じようにはとれないようになっていた.もちろん,少し弾けばもとにもどったのだが,私のような初心者でも(初心者だから?)少し楽器から離れると感覚が鈍ってしまうのかもしれない.