背景と設立趣旨

 人間のもつ多様な機能は身体を土台として成立している.自らの身体の感覚や運動機能,自己周囲の空間の知覚,物体の操作に関わる諸機能はその典型であるが,身体の働きは,このような個体の運動・空間能力のみならず,人間のより広範囲の機能を支える基礎として重要な意味を持っている.例えば,最近の研究によって,身振り手振りや模倣行動がコミュニケーションの基本であること,シンボル操作を含む認知機能の一部が身体を手がかりとして発達することや,高齢者の認知能力が運動機能と関連していることなどが明らかにされつつある.また,道具の利用は人間の身体を拡張する仕組みとして,人間の発達の基盤をなしている.
 以上のことから,人間のもつ感覚,知覚,運動および認知的な能力を,身体を土台としてあらためて考察し,脳情報処理において身体が果たす役割と意味を探ることは,人間自身の理解や脳メカニズムの解明,さらには,ヒューマンインターフェースに関わる諸問題(科学的,工学的,臨床的なものも含む)を解決する手掛かりを与える.
 そこで,「身体性」を中心として人間の高次機能の情報処理メカニズムを議論する場を提供することを目的とする時限研究専門委員会を設置する.本研究では,特に,神経科学,計算脳科学,認知科学,神経心理学,ロボット工学など幅広い分野で独立して行なわれている身体に関わる研究活動の相互交流を促進する.さらに,異分野の相互作用を促進する一つの方策として,研究者の研究成果の交換や公開を促すシステムを構築する可能性を探る.














 
 お問い合せ:身体性情報学研究会 幹事
       井澤淳(電気通信大学)
       E-mail: jizawa[At Mark]hi.is.ac.jp
朝倉暢彦(京都大学大学院情報学研究科)
E-mail:asakura[At Mark]cog.ist.i.kyoto-u.ac.jp