バイオリンのはなし

楽器と身体性

楽器の音は楽器だけでは決まらない

今年に入って,ひょんなことから「古武術を身体の使い方を音楽演奏に活かす」という活動をされているフルート奏者の先生と知り合いになって,講座でお話を聴いたり,電子メールで議論したりしている.その先生の講座では,「身体の状態によって楽器から出る音の響きが大きく変わる」ということが実感できるのだが,その際に,先生の口から「まさに身体性がよくわかる音ですね」という言葉が発せられるのを聴いて,楽器演奏と身体性の関係をあらためて意識させられた.

楽器演奏と身体性の関係については,京大の岡田暁生先生の著作「ピアノを弾く身体」を読んで,強く興味をもっていたのだが,なんとなく自分自身の実感として感じていない部分があった.それが,上の経験でようやく腑に落ちたのである.

そして,恥ずかしながら,私はようやく楽器の音は演奏者の身体との共鳴によって決まることを理解することができたのである.声楽家の声がその声楽家の体型(身体)によって決まることはだれでも容易に想像できると思うが,フルートやバイオリン,ピアノ,はてはトライアングルのような単純な打楽器であっても,演奏者の身体によって音が変わるということである.

さっそくバイオリンの先生にその話をしたところ,それは当然のことだ,というお答えであった.「初心者の人は,高価なバイオリンはどれもよい音がすると思っているけれども,バイオリンと演奏者のあいだには相性がある.だから,楽器を買いにいくときは,よくわかっている人と一緒にいかないとだめである」そして,「自分は生徒と一緒にバイオリンを選びにいくのがとても楽しい」というお話しであった.

つまり,楽器と身体は一体となって音を作り出している,まさに,脳と身体と他者の相互作用による創成されたものといえるだろう(科研費の新学術領域のテーマにぴったりの題材だ!).