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*重音など
**''重音を弾く''
 「重音」とは,1本の弓で2本の弦を同時に弾き鳴らすことである.バイオリンは通常単音であるが,ここぞというところで重音を鳴らす場面がよく出てくる.重音を弾くのは難しいというので,教則本の中の重音の部分をいったんスキップして先に進んでいたのであるが,あらためて重音の練習をすることになった.

 理屈としては,弓を2本の弦に同時に載せて,両方の弦から同じ大きさの音が鳴るようにすればよいだけのことだが,最初のうちは2本の弦から安定して同時に音を出すこと自体ができない.いくら繰り返してもコツがまったくつかめずに本当にめげるのだが,10日間ぐらいすると,何となく弾けるようになってきた.運動学習を研究する身からすると,この間で脳がいったい何を学習しているのかを理解したいところであるが,正直にいって,内省,内観からはまったくわからない.

**''技の習得に関して''
 ついでに書いておくと,バイオリンの練習していてよく思うのは,新しい技の練習を始めるとだいたい10日間ぐらいで何とかなってくることが多いということである.なぜ10日間ぐらいという感覚があるかというと,レッスンの間隔が1週間だと次のレッスンまでにまともに弾けるようにならないが,間隔が2週間あくと2週目の途中あたりでそれなりに弾けるようになってくることが多いからである(レッスンは月3回なので,間隔が1週間のときと2週間のときがある).

 この経験は練習の動機づけを維持するうえで大きな効果がある.というのは,重音もそうであるが,練習を始めて5日間やってもまったくできるようにならないときは正直にいってめげそうになる.この歳になって楽器を始めて短時間で習得できるはずもなく,当初から3年,5年の長期計画で構えているはずなのだが,それでも繰り返し練習してなかなかできないと,やはり焦りの感覚が出てくる.しかし,あと5日間すれば何とかなる,という感覚があると,気持ちに余裕が出てくるわけである.

 ちなみに,二人目の先生の話では,それなりに弾けるようになるには少なくとも3年かかるとのことだった.「それなり」というのがどれくらいのレベルなのかはよくわからないが,3年というのは意外に短い感じがする.私がピアノを習っていた経験,つまり,幼稚園生のときに始めて小学校4年生でやめるまで5年間習い,最後のころにショパンの簡単な曲を弾いていた感じからすると,3年間というのはソナチネを弾きはじめたという感じであろうか.確かに,ソナチネが弾けるようになると,いろいろな曲が「それなりに」弾ける感じである.もちろん,私が3年間でそのレベルに達するかどうかわからないが,そのときのことを楽しみにして練習を続けたい.

**''重音のその後''
 上で10日ぐらいで重音が何とかなるようになったと書いたが,実は,その後も重音には苦労していて,1か月たってもなかなか気持ちよく弾けるようにはなっていない.難しい点はいくつかある.

 一つは,重音だけ取り出して練習すれば安定して重音は鳴るのだが,曲の途中に重音が登場したときに,その最初の音からパンと重音がなる成功率が低いということである.あまりよい表現ではないが,音のフィードバックに頼らずに,フィードフォワードだけで重音を鳴らすことができていないということになろうか.

 次に,二つの弦にかかる力の大きさのバランスをコントロールするのが難しいことである.通常,二つの音を重ねて出すときは,一方が旋律,他方がその修飾(伴奏?)の役割をしているので,旋律の方がやや大きな音が出ていることが望ましい.ということは,その時々に応じて,二つの弦から出る音の大きさをコントロールできないといけないということである.これができるようになるには,まだまだ相当時間がかかりそうである.

 第三に,開放弦で(つまり,左手で弦を押さえずに)弾いている分には重音が鳴るのであるが,左手で弦を押さえると安定性が崩れるということである.別の項でも書いたが,右手と左手で別の動きをすることは難しいことで,左手の動作を加えると,右手の動作にそれが影響するためであろう.これに加えて,左手で弦を押さえるときその弦の位置が下方向に移動するために,二つの弦を同時に弾こうとすると,弓のポジションを微調整しなくてはならないことも関わっているように思う.例えば,最初にD線とA線の二つを開放弦で重音(つまり,レとラの完全5度)を弾いていて,次に,D線を2の指で押さえて重音(ファとラの長3度)を弾き続けようとすると,D線を2の指で押さえるときにD線だけが若干下に移動するために,弓のバランスが崩れてしまうのである.要は,左手の動きに合わせて右手も調整しなくてはならないということである.

 さらに,左手で弦を押さえるとき隣の弦に指が触れてはいけないという制約が加わるため,左手の動きがぎこちなくなり,それが上の第三の要素にさらに影響することである.単一の弦の場合は,多少,指が隣の弦に触れてしまっても致命的な問題にはならないが,
重音の場合は,隣の弦に指が触れると,それによりもう一つの音程が変わってしまうことになる.

 いましばらく我慢の時間が続きそうである.